戸建住宅、マンション、いずれの場合も「防音」は、悩ましいテーマです。
ピアノ室などの音楽室を計画させて頂く際、ご要望として、
- しっかり防音したい。
- 夜遅くまで弾く(練習する)ので、近隣の人には迷惑をかけたくない
- ボックスタイプの防音室は、部屋が狭くなるので、気が進まない
- 防音+良い音で響くようにしたい
- 出来るだけ、コストを抑えたい
というお声を多く頂きます。
今回は、壁の防音の方法について見ていきます。
【目次】
音の伝わり方の種類
音の伝わり方には、主に3種類あります。
- 反射 (跳ね返った音)
- 透過 (遮蔽物を通り抜けた音)
- 吸収 (遮蔽物によって消滅した音)
この図から、
入遮波=反射波+吸収(熱エネルギー)+透過波
ということが分かります。
遮蔽物である「壁」が完全な剛体ならば、音波の振動エネルギーは、全て反射されます。
(音は重量がある物ほど、防音効果が高い)
逆に、壁が弱くて振動すると、音波は反対側に「透過波」として伝わってしまいます。
音波は壁を通過するときに、振動エネルギーは熱エネルギーとして吸収される量があります。
なので、反射しなくても、吸音率が高ければ、防音効果は高いと言えます。
材料ごとの遮音について
<コンクリート壁>
質量が大きくなると、オクターブあたり5dBの勾配で遮音性能は大きくなる。
コインシデンス効果が生じる周波数も、計算値と一致する。
コンクリート系の住宅の外周壁として使用する場合、120㎜~150㎜の厚さの壁で、500Hzで50dBの遮音性能があり、騒音に対しては、十分な性能といえます。
※コインシデンス効果→特定の周波数において、壁等の屈曲振動と音波の波長が一致すると、振動が大きくなり、遮音性能が下がる現象。
<コンクリートブロック>
表面処理をせずにそのまま使用すると、質量則より遮音値は小さくなる。
しかし、表面に合成樹脂塗料、モルタル、プラスターなどを塗って通気性をなくすと、ほぼ質量則通りの遮音値が得られる。
コインシデンス効果による遮音値の落ち込みは少ない。
<中空二重壁>
中空二重壁は、基本的には下記の図のような遮音性能を示すが、表面の材料によって変わる。
●表面材
表面材の質量を増すと遮音性能は増加する傾向にあり、表面材を複層にすると特定の周波数での遮音性能の落ち込み(コインシデンス効果)は緩和される。
●中空層
中空層の厚さを増すと、低音域の遮音性能は改善される。(上部の表、第Ⅱ領域)中空層にグラスウールやロックウールなどの吸音材を挿入することでも、遮音性能は良くなる。
木造系の住宅は、コンクリートの壁に比べると、遮音性能は劣りますが、この中空層の壁、ロックウールなどの吸音材の組み合わせにより、コンクリート壁と同等くらいの遮音性能を得ることが出来ます。
●間柱
表面材の間柱への取付方法や、間柱を独立(千鳥で配置など)するかしないかによっても、遮音性能は変化する。
●GL工法
コンクリートの壁の仕上げ工法として、集合住宅などによく用いられる。
コンクリート単体と比べると、実際には低音域、高音域で、遮音性能は小さくなる。これは、表面材とコンクリート壁との間にある空気がバネになって表面材を振動させる為です。
開口部の遮音性能
どんなに部屋と部屋の間にある壁を遮音しても、窓の遮音性能が低いと、窓を通して音は伝わってしまいます。
そこで、窓の遮音性能について、見ていきます。
<窓(防音サッシ)の遮音基準>
JISで、窓(サッシ)の遮音性能について、4つの等級を定めています。
数値が大きいほど、遮音性能は高いといえます。
騒音レベルと、サッシの性能によって、どのくらいの遮音性能があるかを示した図です。
T-1レベルでも、街の騒音レベルなら、かなり改善されることが分かります。
ドアの遮音基準
今の所、住宅用のドアに関しては、集合住宅の界壁で規定されているような遮音設計基準は無いです。
一般的に、ピアノ室のような音楽室には、メーカーのスチール製「防音ドア」を採用することが多いです。
換気口の防音装置
今は、24時間換気が義務付けられているので、換気口の問題は避けられません。
せっかく壁、サッシで遮音をしても、24時間換気の換気口から音が漏れることも、十分にあり得ます。
そこで、ロスナイという熱交換型の同時給排の換気扇を使用します。
これに、防音フードを付ければ、合計で約40dBの遮音性能があります。
40dBの遮音性能では足らない!と言う場合は、換気ダクトを設けて、少し離れた所と給排気をする、という方法もあります。
その場合、換気ダクトの防音も検討する必要があります。
※次回は、床の防音の方法を見ていきます。
帰り際にポチッとしてもらえると励みになります!
名古屋の建築家はAi設計*山内智恵
Ai設計室株式会社 住所:〒466-0006 愛知県名古屋市昭和区北山町3-12
電話:052-731-3317 FAX:052-731-9353