お部屋を防音室にする|ピアノ、ドラムなど|壁の防音の方法

戸建住宅、マンション、いずれの場合も「防音」は、悩ましいテーマです。

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ピアノ室などの音楽室を計画させて頂く際、ご要望として、

  • しっかり防音したい。
  • 夜遅くまで弾く(練習する)ので、近隣の人には迷惑をかけたくない
  • ボックスタイプの防音室は、部屋が狭くなるので、気が進まない
  • 防音+良い音で響くようにしたい
  • 出来るだけ、コストを抑えたい

というお声を多く頂きます。

 

今回は、壁の防音の方法について見ていきます。


【目次】

1.音の伝わり方の種類

2.材料ごとの遮音について

3.開口部の遮音性能

4.ドアの遮音基準

5.換気口の防音装置


音の伝わり方の種類

音の伝わり方には、主に3種類あります。

  • 反射 (跳ね返った音)
  • 透過 (遮蔽物を通り抜けた音)
  • 吸収 (遮蔽物によって消滅した音)

 

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この図から、

入遮波=反射波+吸収(熱エネルギー)+透過波

ということが分かります。

 

遮蔽物である「壁」が完全な剛体ならば、音波の振動エネルギーは、全て反射されます。

(音は重量がある物ほど、防音効果が高い)

 

逆に、壁が弱くて振動すると、音波は反対側に「透過波」として伝わってしまいます。

 

音波は壁を通過するときに、振動エネルギーは熱エネルギーとして吸収される量があります。

 

なので、反射しなくても、吸音率が高ければ、防音効果は高いと言えます。

材料ごとの遮音について

<コンクリート壁>

質量が大きくなると、オクターブあたり5dBの勾配で遮音性能は大きくなる。

コインシデンス効果が生じる周波数も、計算値と一致する。

 

コンクリート系の住宅の外周壁として使用する場合、120㎜~150㎜の厚さの壁で、500Hzで50dBの遮音性能があり、騒音に対しては、十分な性能といえます。

※コインシデンス効果→特定の周波数において、壁等の屈曲振動と音波の波長が一致すると、振動が大きくなり、遮音性能が下がる現象。

<コンクリートブロック>

表面処理をせずにそのまま使用すると、質量則より遮音値は小さくなる。

 

しかし、表面に合成樹脂塗料、モルタル、プラスターなどを塗って通気性をなくすと、ほぼ質量則通りの遮音値が得られる。

コインシデンス効果による遮音値の落ち込みは少ない。

<中空二重壁>

中空二重壁は、基本的には下記の図のような遮音性能を示すが、表面の材料によって変わる。

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●表面材

表面材の質量を増すと遮音性能は増加する傾向にあり、表面材を複層にすると特定の周波数での遮音性能の落ち込み(コインシデンス効果)は緩和される。

●中空層

中空層の厚さを増すと、低音域の遮音性能は改善される。(上部の表、第Ⅱ領域)中空層にグラスウールやロックウールなどの吸音材を挿入することでも、遮音性能は良くなる。

 

木造系の住宅は、コンクリートの壁に比べると、遮音性能は劣りますが、この中空層の壁、ロックウールなどの吸音材の組み合わせにより、コンクリート壁と同等くらいの遮音性能を得ることが出来ます。

●間柱

表面材の間柱への取付方法や、間柱を独立(千鳥で配置など)するかしないかによっても、遮音性能は変化する。

●GL工法

コンクリートの壁の仕上げ工法として、集合住宅などによく用いられる。

コンクリート単体と比べると、実際には低音域、高音域で、遮音性能は小さくなる。これは、表面材とコンクリート壁との間にある空気がバネになって表面材を振動させる為です。

開口部の遮音性能

どんなに部屋と部屋の間にある壁を遮音しても、窓の遮音性能が低いと、窓を通して音は伝わってしまいます。

そこで、窓の遮音性能について、見ていきます。

<窓(防音サッシ)の遮音基準>

JISで、窓(サッシ)の遮音性能について、4つの等級を定めています。

数値が大きいほど、遮音性能は高いといえます。

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騒音レベルと、サッシの性能によって、どのくらいの遮音性能があるかを示した図です。

T-1レベルでも、街の騒音レベルなら、かなり改善されることが分かります。

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ドアの遮音基準

今の所、住宅用のドアに関しては、集合住宅の界壁で規定されているような遮音設計基準は無いです。

一般的に、ピアノ室のような音楽室には、メーカーのスチール製「防音ドア」を採用することが多いです。

ヤマハ防音ドア

ダイケン防音ドア

東洋シャッター防音ドア

 

換気口の防音装置

今は、24時間換気が義務付けられているので、換気口の問題は避けられません。

せっかく壁、サッシで遮音をしても、24時間換気の換気口から音が漏れることも、十分にあり得ます。

そこで、ロスナイという熱交換型の同時給排の換気扇を使用します。

これに、防音フードを付ければ、合計で約40dBの遮音性能があります。

ロスナイ(三菱)

 

40dBの遮音性能では足らない!と言う場合は、換気ダクトを設けて、少し離れた所と給排気をする、という方法もあります。

その場合、換気ダクトの防音も検討する必要があります。

 

 

※次回は、床の防音の方法を見ていきます。


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名古屋の建築家はAi設計*山内智恵

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この記事を書いた人

chieyamauchi

やまうち ちえ
愛知県名古屋市で一級建築士事務所を経営しています。
「夢を形に・愛・記憶を未来へ」の経営理念をもとに
設計しています。
どうぞ、よろしくお願い致します!